昆布の故郷にて
近年、食の西洋化や多様化が進む中で手間暇をかけて食を作ることが少なくなってきたと思います。
私たちが扱う「昆布」もその一つ。
当店であつかう昆布の半分ちかくを占める「真昆布」の生産地である北海道の道南地方の風景。
昆布はこの海から採れます。
さて昆布は「天然」と「養殖」がございます。ご存知でしょうか?
同じ「真昆布」なのですが、どちらが「天然」ものでどちらが「養殖」ものかお分かりになられますか?
ほとんど同じに見えますが左が天然昆布で右が養殖昆布です。
プロの目で見ても「ん?」というくらい見分けがつきにくいものなのですが、天然の昆布は胞子を岩場に付着させ2年の年月をかけて生育していきます。
養殖の昆布は魚などの養殖と違い昆布の養殖は餌を与えたりして育てるのではなく、昆布の胞子を植え育てていくというもの。
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海の栄養分をたっぷりと含んだ昆布はずっしりと重いんです!
これを船に引き上げる作業はとても重労働!
このように海に浮かぶブイは昆布の養殖をするためのもの。
この部位から海底に向かいロープを垂らし、そこの昆布の胞子をつけて育てていきます。
養殖昆布の漁師さんはこのブイのことを自分たちの「畑」だとおっしゃいます。
「種を植えて土の中で育てる」「土か海かの違いだけで根本は同じ」という考えからでしょう。
「天然」だから「養殖」の昆布より絶対に美味しい!
多くの昆布屋や料理に携わる方の中にも、こういう考えをされる方がいらっしゃいます。
私の考えは少し違います。
その理由は・・・
例年7月~9月にかけて2年という長い歳月をかけて育った昆布、漁師たちの手によりまだ辺りが暗い早朝から始まり、
明るくなる頃には干場(かんば)と呼ばれる石を敷き詰めた場所に並べて干されます。
ほとんどの漁師さんの自宅の前に干場(かんば)があります。
(夏休みなども重なるので中学生くらいの子供たちも)
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あらかたの乾燥を終えると、次は乾燥機にかけたりし、さらに干していきます。
私の身長が165cm。
その倍以上はある昆布です!
そして、さらに出荷する先の形状にあわせて平くのして切ったり、ほぼ手作業で梱包出荷します。
漁師さんとお話をする中で、悩みを聞くと…。
「こんな辛い作業、これからの時代に誰がやるのか」
「こんな疲れる仕事のところにはわざわざ来る嫁がいない」
「高齢化」
などの声でした。
ここ数年で廃業される方はもちろんのこと、10数年後には何件の漁師が残るのか。
それが問題だと。
![](https://kyokonbu.jp/wp-content/uploads/2020/03/IMG_3886-1024x768.jpg)
1960年、先に述べた養殖の昆布が導入されてから50年以上の歳月が流れ
天然もの昆布しかない時代にくらべ飛躍的に昆布漁師の生活は安定したと言われていますが、
これからの見通しは決して明るいものではないのかもしれません。
そういった作り手の大変さや苦労を目の当たりにして、私が想うことは
その昆布という食べ物の美味しさや素晴らしさを
様々な形で伝えていくことではないか、ということ。
「天然」の昆布にはもちろん特有の厚さがあったり
「養殖」の昆布には使いやすさや何よりも安定した価格が大事だし、
その違いや、それぞれの良さがあるものなのでその事をわかりやすく、
お客様につたえることが大事なのだと思います。
私は決して「高価」なだけの昆布をお勧めしませんし販売しません。
「昆布」という「食材」がこれからも多くの人々に愛してもらうためには、
1枚が何千円もする昆布ではなく、
日常に使っていただけるお値段で販売したいしお勧めしたい。
昆布に付加価値などは必要ないと考えてます。
流通の中で生じる価格だけで良いと。
「利尻昆布や、羅臼昆布、日高昆布と色々あるけど一体どれが”一番いい昆布”なの?」
と、おっしゃいます。
私は「”一番いい昆布”なんてないです。」
「お使いになられるお客様がどういった形でお使いなられるかで決まりますので」
と、お答えします。
綺麗な出汁をとりたいなら”利尻昆布”を
煮て食べたいなら”日高昆布”を
力の強い出汁がとりたいなら”羅臼”を
美味しい佃煮を炊きたいなら”真昆布”を
と、いったように。
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これからの昆布文化がより良いものになるように努めたい。
そいう気持ちから「京昆布舗 田なか」は函館「南かやべ」の真昆布の種を買い、
その育てた昆布をお客様へ販売していくという
「生産から加工販売までわかる昆布」の取り組みを始めました。